民法改正(相続法)について

Kincse_j / Pixabay

先般、民法改正が国会を通りまして、相続法も順次施行予定が出てきています。

相続に関して不都合な点が、今回の改正で改善されています。特に自筆証書遺言に関しての取り扱いが改正され、使い勝手が良くなっています。

今回の相続法改正の主な内容を説明してみたいと思います。

「配偶者居住権」の創設

配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物に無償で使用することができる権利です。

平たく言うと、老夫婦が旦那様所有の一戸建てに住んでいて、旦那様が亡くなったあとでも、奥様はそのまま住み続けることができるということです。

一見当たり前のようですが、旦那様の財産のほとんどが土地家屋だけで、預貯金が少ない場合、奥様と子供がいる場合、子供に財産を半分渡さなければなりませんので、預貯金が足りなければ土地家屋を売却する必要がでてきます。

しかし、このほど創設の「配偶者居住権」があると、奥様が住み続けることができるようになります。

 

自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に

いままでは、自筆証書遺言は全文を自筆で作成する必要がありました。遺言書には財産目録を記載する必要がありますが、財産が土地家屋一つと銀行口座一つだけならそんなに手間はありませんが、銀行口座や証券口座がたくさんあり、土地もたくさんあるようでしたら、それを手書きするのも一苦労です。しかし今後は、表紙だけ自筆で作成し、添付書類の財産目録はパソコンのワードやエクセルで作成することが認められるようになります。全文自筆で作成する必要がないので、自筆証書遺言の作成が大分楽になります。

ただ、パソコンで作成した財産目録にも自筆にて記名して押印する必要はあります。

 

法務局で自筆証書による遺言が保管可能に

いままでは、自筆証書遺言は自宅にて保管でしたが、今後は法務局で保管する制度が始まりますので、自筆証書遺言がより利用しやすくなります。

自宅で保管した自筆証書遺言は、被相続人が亡くなると法定相続人全員がそろって家庭裁判所に行き検認して開封しなければ法的に無効でしたが、法務局で保管した自筆証書遺言は検認不要で法的に通用する遺言書になりますので、自筆証書遺言がとても使い勝手がよくなります。

 

被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に

いままでは長男の嫁が長男の親を介護などで貢献しても、法定相続人でないので遺産の分配はなく、不公平な財産分与が行われてきました。

今後は、被相続人に特別な貢献をした方には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。

 

配偶者短期居住権

配偶者が相続開始時に被相続人の所有する建物に居住している場合に、遺産の分割されるまで、その建物に無償で居住することができる権利です。

相続開始から6カ月以内に誰が建物を相続するか確定するのが決まれば、相続開始から6カ月間は配偶者はその建物に居住することができるようになります。

遺言で第三者に遺贈された場合は、その第三者から自宅の明け渡しを要求されたら、その要求されてから6カ月は配偶者は居住することができるようになります。

 

自宅の生前贈与が特別受益の対象外になる方策

結婚して20年以上の夫婦が、旦那様名義の自宅を奥様に遺贈・贈与された場合は、遺産分割には自宅を相続財産に入れる必要がなくなります。

例えば、自宅と預貯金2000万円で、夫婦と子供一人の場合で、旦那様が亡くなる前に奥様に自宅を贈与しておくと、旦那様が亡くなった場合、自宅を相続財産に計算せず、預貯金2000万円を奥様とお子様で1000万円ずつの分配とすることができるようになります。

 

遺産の分配前に被相続人名義の預貯金の一部が引き出し可能に

いままでは、被相続人名義の預貯金は、遺産分割が終了するまでは引き出しができませんでしたが、これからは葬儀費用や相続債務の弁済などの場合は遺産分割が終了する前でも引き出すことが可能になります。