コンテナ船衝突と共同海損

静岡県の石廊崎沖でコンテナ船と米国海軍駆逐艦と衝突との時事通信のニュースです。

 静岡県南伊豆町の石廊崎沖で米海軍のイージス駆逐艦とフィリピン船籍のコンテナ船が衝突した事故で、第3管区海上保安本部(横浜市)などは17日午後、行方が分からないイージス艦乗組員7人の捜索を続けた。
海保は巡視船など6隻とヘリなど航空機3機のほか、特殊救難隊を捜索に投入。海上自衛隊も海保の災害派遣要請を受け、航空機3機と護衛艦など3隻が捜索や負傷者の搬送に当たった。
関係者によると、コンテナ船の船長は「米艦船と同方向に進んでいたところ衝突した」と話しているという。コンテナ船は17日夕、東京・大井ふ頭に到着し、海保は船長や乗組員から詳しく事情を聴いて衝突の原因を調べる。また、運輸安全委員会は調査官3人に調査させることを決めた。
事故は17日午前2時20分ごろ、石廊崎の南東約20キロ沖合で発生。横須賀を拠点とする米第7艦隊のイージス駆逐艦「フィッツジェラルド」(8315トン)と、コンテナ船「ACXクリスタル」(2万9060トン)が衝突した。イージス艦の艦長ら3人が負傷し、米軍横須賀基地に搬送された。コンテナ船のフィリピン人乗組員20人は無事だった。

日本郵船の船ですが、よく東京船舶の船に命名されていた「ACXシリーズ」の船ですね。

この船は東南アジア方面の近海航路に従事している本船で、バンコク・ホーチミンと日本を結んでいます。関西・名古屋に寄って東京に向かっていたとのことですから、関西・名古屋積みの輸出貨物と東京揚げの輸入貨物が積んであったのでしょう。

報道で見る限りコンテナ船も船首部分が損傷していますから、東京CYで全量下ろしてドック入りすることになるとは思っていましたが、日本郵船のホームページを見ますと、東京にて荷役をしたあと、横浜に行って荷役をするそうです。その後は代船を用意するのとのことですので、おそらく横浜で全量を下ろすのでしょう。

さすが日本郵船、土日なのに早速ホームページで状況を発表するとはクオリティーの高い仕事っぷりです。ほかの外船社とは二味も三味も違います。

さて、このような場合、船主の判断にはなりますが、共同海損を宣言すると思います。

共同海損とは、航海中に生じた損害あるいは費用をその海上事業に加わっている関係者(船主や用船者、荷主等)で分担しあうという制度です。 共同海損とは、「共同海損行為」が行われ、その行為の結果として航海中に生じた損害あるいは費用をその海上事業に加わっている利害関係者(船主や用船者、荷主等)で分担しあうという制度です。

平たくいえば、船が危ない場合、その費用を皆さんで負担しましょうということで、例えば衝突事故でコンテナが2~3個海中に沈んだ場合、その貨物代金とコンテナ代・船の修理代金などを荷主・船主・用船社の皆さんで負担しましょうということです。B/L約款に記載されています。

負担といっても、大体は保険に入っていますので、保険で対応となるので安心です。「入ってよかった海上保険!」です。たまに貨物代金が安い荷主は海上保険に入っていませんが、その場合は大変です。

荷主にとっては、勝手に船社が事故を起こして、海上保険を使われてしまうのか、というように思われますが、下手をすると船が沈んでしまったら貨物は全損となりますが、それを防ぐための費用や、船が沈むのを防ぐために犠牲になった貨物代金などを皆で負担しようという趣旨と思えば理解できます。

何年か船会社の社員をやると、共同海損に当たってしまいます。営業社員ですと顧客対応が大変ですが、船の事故はしばしば起こりますので、顧客側も慣れている担当者がいらっしゃいますので、その場合はスムーズに事は進みます。

船会社の営業社員のすることといえば、海上保険の証書と船積み書類を顧客から提出してもらい、あとは顧客に対する誠意ある対応と情報提供です。

大変なのはオペレーションなどの運航関係者ですね。外船社でしたら本国との対応、さらに本船・ターミナル・船級・当局との膨大なやりとりがあります。邦船社でしたら、本国運航側ですのでますます大変です。船主・現地・本船・造船所とのやりとりに忙殺されるのでしょう。

今回の事故は、コンテナ船側には死傷者がいませんが、米艦船側には残念ながらいるとのことす。亡くなられた乗組員の方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。